11月に読んだ本

洋書を読むとき、分からない単語があっても前後から意味を推測して読む速度を速くすることを心がけて、その度に辞書を引くことはしないようにしています。ただ、1ページに10以上も知らない単語が出てくると辞書を引かないと全体の意味がとれなくなってしまうため、辞書を使わざるを得ません。読もうとして途中で頓挫したA.S.ByattのThe Virgin in the Gardenは単語が難しくて構文も複雑で、なかなか読み進められませんでした。
そこで、英文にもっと慣れるまではもう少しやさしいものを多読しようと思いました。ドナ・ジョー・ナポリは、日本でもグリム童話のアダプテーションなどが翻訳されていて、人気のある作家です。アメリカの図書館にはどこでも10冊以上蔵書があり、常時半分くらいは借り出されています。一文が短くて語彙も易しく、しかも読み始めると引き込まれる面白さで、私のような英語学習初心者にはうってつけかと思いました。
  1. Hush
    紀元900年ころ、アイルランドの小国の王女であるメルコルカの物語です。もともとは、「アイスランドの首領、ホスクルドがロシアの奴隷商人から買った奴隷の愛人は、言葉を発さなかったが、息子が生まれて話しかけているのを聞いて初めて彼女がメルコルカという王女であることを知った」という、「サガ」の逸話から題材を取っているそうで、サガにはそれだけしか情報がないところ、ナポリはメルコルカが奴隷商人に誘拐されてから買われてアイスランドに連れられて行くまでの旅を描いています。過酷な状況で黙秘の誓いを立て、賢く思いやり深い女性に成長していくメルコルカが魅力的です。人間が売買されて人間らしからぬ扱いを受けるということはショッキングであり、最初は傲慢な王女で、奴隷を使う立場であったメルコルカが逆の立場に落ちるのは色々と考えさせらるものがあります。

  2. Song of the Magdalene
    マグダラのマリアがキリストに出会うまでの物語です。西アジアの乾燥した気候やユダヤ教の慣習などを背景に、ミリアム(マリアのヘブライ語読み)幼馴染で肢体不自由者のアブラハムとの恋や、社会から排斥されるさまが書かれ、キリストは女性を含め、弱者にとって救いだったのだろうと思いました。ミリアムの人生には次々と辛いことが起こりますが、一つ一つがドラマチックで、また切なくもあり、読み始めると止まらなくなります。

  3. The Smile
    レオナルド・ダ・ヴィンチの「モナリザ」のモデルと言われているリザ・ジョコンダの小説です。舞台はメディチ家が権力を持ち、サヴォナローラが民衆を扇動した16世紀のフィレンツェです。題材としては面白く、色々に時代や場所を変えてその時々の様子を魅力的に描写するナポリはすごいな、とは思うのですが、主人公のエリザベッタが少しつまらない人で作品を損なっているのが残念です。「モナリザ」を題材に取った小説としてはカニグズバーグの『ジョコンダ夫人の肖像』の方がお勧めです。






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