Ethan Frome (本)


【書誌情報】
Ethan Frome, Edith Wharton, 1911

【あらすじ】
ニューイングランドの小さい町に仕事で滞在している語り手は、足を引きずって歩き、顔に傷があるイーサン・フロムに強い興味を抱く。雪嵐の夜にイーサンの家に宿泊した語り手は、彼の過去を知る。

イーサンは細々と農業を行っており、母の看病をしてくれた従姉ジーナと20代で結婚するが、妻は病弱で気難しい性格で結婚生活はうまく行かない。夫妻はジーナの親戚の孤児の娘、マティ・シルバーを家事手伝いとして引き取る。純粋で素朴なマティとイーサンは恋に落ちるが、 妻は快く思わない。イーサンは妻に追い出されたマティを駅に送っていくべく橇で連れ出し、心中を試みるが…

【コメント】
イーディス・ウォートンはニューイングランドやニューヨークを中心とする作品を書いた上流階級の作家でした。写真を見るといかにもニューイングランドらしい容姿です。サージェントの描く肖像画のような印象です。マーティン・スコセッシ監督の『エイジ・オブ・イノセンス』はイーディス・ウォートンが原作です。

映画は視覚的に華やかでしたが『無垢の時代(=エイジ・オブ・イノセンス)』の小説はかなり陰鬱・難解で3回くらい読もうとしていつも数十頁で挫折していました。せっかくニューイングランドに住んでいるので少しはこの地方に縁のある物を読もうと思って読みました。

おもしろいのは、途中までは「このまま終わりまで行ったら単に『思い出は美しい』というだけのちょっとマヌケな話になるなぁ」と油断させておいて、最後には、そうなるんですか!と衝撃を与えてくることです。裕福で温和な未亡人が最後で非常にシビアな発言をすることも驚きます。なかなか渋い中編でした。

ニューイングランドの作家は、イーディス・ウォートンの他
  • ヘンリー・ジェームス
  • ハーマン・メルヴィル
  • ナサニエル・ホーソン
などが思い浮かびますが、とてもきまじめで、悪く言えば辛気くさい感じの小説が多いです。ピルグリム・ファザーズがイギリスを去るときにユーモアは地元に置いてきたのだろうと思います。


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