The Virgin Blue, Tracy Chevalier




【書誌情報】
Tracy Chevalier, The Virgin Blue, Penguin Group, 1997

【あらすじ】
エラ・ターナーは夫の仕事に伴い、カリフォルニアからフランスに渡る。助産師の仕事を再開するため、フランス語を勉強する傍ら数百年前にその地に住んでいた先祖について調査をし、調査に協力してくれた図書館員と親しくなる。16世紀に生きたエラの先祖、イザベルもまた産婆の技術を持っていたが、不運な結婚をして夫から仕事を禁じられる。イザベルの夫の家族の家には、ある秘密があり、それゆえに家が何十年間も安全に守られてきたのだという。家族はユグノーだったため、迫害を恐れてイザベルと夫は子供たちを連れてスイスに逃亡する。故郷との違いに戸惑いつつもスイスでの生活が安定してきたところに…

【コメント】
 トレイシー・シュヴァリエの第一作です。『真珠の耳飾りの少女』よりも2年前に出版されました。現代のフランスに生きる、アメリカ人のエラと、400年前に生きたその先祖のイザベルの物語が交互に語られます。

時代設定が100年以上昔の場合、シュヴァリエは必ず女性に対する抑圧に言及し、男社会に対する憤りが感じられます。その反動か、現代人のエラは与えられた権利と立場を最大限に利用する、トンデモナイ人として書かれています。専業主婦なのに料理もせず(でも食器洗い機は買う)、夫の出張中は不倫に励み、手土産も持たずに会ったことのない親戚の家に押しかけ、挙句の果てには…!読んでいるうちに、このロクデナシぶりがむしろおもしろくなってきます。

対照的にイザベルの方は夫と姑に仕え、自由がありません。家族の死、不幸な結婚、迫害など、大変なことの連続です。試練に耐えると、次にもっと大きな試練が襲います。影と光のような二人のヒロインですが、「赤毛」、「産婆」、「青い布」など、いくつかの点でリンクしていて、イザベルに導かれるようにしてエラは遠い先祖の秘密を知ります。

同じ作者の他の作品と比べると、少し粗さが目立つ気がします。おもしろいことはおもしろいですが、人物描写が極端過ぎて、ややフラットに感じます。青い色や髪の毛を隠すターバンは、第二作にも共通するモチーフであり、特に「青」はシュヴァリエのどの小説でも要所に使われています。

トレイシー・シュヴァリエの公式サイトです。 来年には新刊が出るようです。

表紙絵は赤毛が印象的な美人ですが、内容とは関係がありません。

 

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