図書館の読書会

Caleb Cheeshahteaumuck (1646-1665)

 カレン・ジョイ・ファウラーの『ジェーン・オースティンの読書会』を読み、映画を見て読書会に憧れていました。楽しそうだなと思い、日本にいたとき読書会を探してみたのですが、日本には少ないし、あったとしてもビジネス書とか自己啓発本の読書会が目につきました。日本人の勤勉で勉強熱心な性格を反映しているのだろうと思いますが、私は怠惰でお勉強がキライなので、そんな真面目な読書会には参加する意欲がありませんでした。

アメリカは読書会がさかんで、一つの図書館につき5種類くらいの読書会が図書館主催で行われており、自主的に集まっているグループもたくさんあるようです。こちらでは参加させてもらうような人脈がないので、近所の図書館の読書会に参加しました。

今回の課題図書はGeraldine Brooks著Caleb's Crossingでした。舞台がマサチューセッツ州マーサズヴィンヤード島とケンブリッヂなので、この辺りの読書会ではよく取り上げられる本です。実話に基づく、初めてハーヴァード大学に入学したワンパノグ・インディアンの少年、ケイレブの物語です。ケイレブと出会い、彼に英語を教え、イギリス人の社会への橋渡しをしたベシアの視点から語られます。ベシアは女性であったために望むような教育は受けられませんでしたが、聡明な少女でした。ケイレブもまた高い知性の持ち主で、二人がインディアンの宗教とキリスト教の世界観について議論するシーンが印象的です。ベシアは兄、母、妹、父と次々と家族を失い、ケイレブがpreparatory school(予備校?)に行く間やハーヴァードに進学した後も近くで見守ります。二人はひかれる部分があったようですが、プラトニック・ラブに徹していて、しかも抑圧的なプラトニックでない部分に好感を持ちます。白人とインディアンの軋轢も本書のテーマの一つです。

作者は本書執筆にあたり当時の裁判記録や遺言を参照して17世紀の英語を模したとのことで、現在では使われていない表現もあり、テーマも重めなので読むのは難儀しました。宗教のあり方や、異なる社会の関係について重要な問題提起をしているので、読書会でもよく取り上げられるのだと思います。

読書会はシニアセンターで開催されました。平日午前の会合なので平均年齢150歳といったところで、全員が白人でした。参加者は20人を超える大きなグループでした。私はその中では若輩者ですし、アジア人で英語もほとんどしゃべれないので、発言するのは控えました。図書館の館長先生が進行役でした。議論したテーマは
  • crossingの内容
  • ベシアとケイレブ、ベシアと兄のメイクピースの関係について
  • ケイレブともう一人のインディアンの少年、ジョエルがハーヴァードに入学して以来、21世紀になってから約350年ぶりにワンパノグの女性がハーヴァードに入学した事実について
  • ワンパノグの世界観や信仰について
等です。作者のジェラルディン・ブルックスは近々、近隣の学校で講演を行うとのことで、その案内をもらいました。読書会自体には興味がありますが、今回参加したグループは人数が多すぎるし、私はアウトサイダー気分を十分味わったので、二回目は行かないと思います。課題図書でなければ読まない本を手に取れたのは良かったです。



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