The Picture of Dorian Gray(本)


【書誌情報】
Oscar Wilde, The Picture of Dorian Gray, Lippincot's Monthly Magazine,1890

【あらすじ】
画家、バジル・ホールワードが見つけた天使のような美青年、ドリアン・グレイは怠惰で放蕩者の貴族のヘンリーに強く影響されるようになる。ドリアンの恋人、シビルはドリアンに振られて自殺する。彼を慰めるためにヘンリーは豪華絢爛で空疎なフランス小説を贈り、ドリアンは複数の女性と不倫の恋をしたり怪しげな地下室でアヘンを吸ったりするようになる。10年以上経ってもドリアンの美貌には変化がなかったが、ホールワードが描いたドリアンの肖像画は変貌していた。久しぶりに会ったドリアンの変わらぬ美貌に驚いたホールワードは…

【コメント】
オスカー・ワイルドの同性愛傾向が色濃く反映されているといわれる、ワイルド唯一の長編小説です。大学で英文学史の講義を取っていたとき、課題図書だった気がしますが、あまりおもしろくなくて数ページで挫折しました。英語の先生がオスカー・ワイルドが好きだとおっしゃるので、読んでみました。

内容は途中5割くらいまではほとんど何も起こらず、7割くらいまであまりおもしろくないです。衒学的・抽象的な話題が多くて疲れてきます。アフォリズムをマシンガンのように浴びせられても困ります。しかし、途中から急展開で俄然興味が沸きます。ドリアン・グレイが強く影響を受けたというユイスマンスの『さかしま』も読んでみたいと思いました。

ドリアンは非常に美しい青年でした。私のドリアン・グレイの容貌のイメージはオスカー・ワイルドのゲイの恋人だったアルフレッド・ダグラス卿ですが、ドリアンがあまりにも悪い人なので、現実に存在した人に重ねるのははばかられます。画像はギリシア神話に登場する、ゼウスに愛された美少年のガニュメデスです。

一緒に読んだ夫がドリアン・グレイを攻撃していたのがおかしかったです。「ドリアンて最低な奴やな。あいつはあかんわ。どうして殺すねん。信じられんわ、ああいうことしたらあかんで。だいたい『ドリアン』て名前からして悪そうやん」と言っていました。それで先生に「現実にドリアンという名前の人を見たことがありますか」とお尋ねすると、「ありません。ドリアンという名前自体がとても珍しいし、この本のせいで『ドリアン=悪い人』というイメージが定着してしまったので、あえてドリアンという名前を付ける人はまずいないでしょう。同じように『ロリータ』という名前の人も見たことがありません」とおっしゃっていました(ロリータは本来ドロレスですが、ドロレス自体が古い名前で現在ではあまりないそうです)。

バレエの『ドリアン・グレイ』が今日本で上演されて話題になっているようですね。予告編を見てみると、原作の雰囲気とは大幅に違いますが興味が沸きました。

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