2013年12月30日月曜日

2013年 今年達成したこと、良かったこと


  • ヨーロッパ旅行
    コペンハーゲン、ベルリン、ウィーンに行きました。どこも良くて、全日程を存分に楽しみましたが、コペンハーゲンで絵に描かれたとおりのハンマースホイの家を見られたことが特に感慨深いです。惜しみなく費用を出してくれ、私の行きたい所に付き合ってくれた夫に感謝します。
  • ヴンダーカンマー的空間を作った
    「驚 異の陳列棚」を作りました。将来的には書斎を作って全体をヴンダーカンマー的にするか、ヴンダーカンマーゾーンを部屋の一画に拡大するのが夢です。はやり の断捨離には興味が持てず、夫に「モノが増えたなぁ」と言われています。家にあるもののほとんどが私のガラクタなのでそう言われると耳が痛いです。
  • 日商簿記2級
    簿記2級は就職する前から複数の人に「取るように」と勧められていたので、遅すぎてまったく自慢できるようなことではないのですが、なんとか合格できました。

  • 洋書多読 
    今年は60冊読みました。渡米して、洋書多読を始めた頃には「100冊読めば、さほど苦労せずに読んで理解もできるようになる?」と甘 いことを考えていましたが、未だに英文を読むのに苦労し、内容は3%くらいしか理解できていないので、まだまだ全然ダメです。読んで楽しめたから良い、と は私はあまり思えないので、精進します。英語のレッスンで、先生、夫と10冊以上読みました。私は暇人ですが、二人は普段のお仕事もあるのに、一緒に読ん でくれてありがたいです。クリスマスプレゼントとして、先生から550頁もある本を頂いてしまったので現在読書中です。本については、別記事を投稿しまし た。2013年の10冊
  • 英語ができない
  • ドイツ語
    後半サボりすぎました。来年は心を入れ替えて取り組みます。
  • ウォズワース・アテイナイオン美術館
    ヨーロッパ、アメリカでいくつかの美術館を訪れました。ヨーロッパはもちろんすばらしいのですが、アメリカ国内ではずっと行きたかったウォズワース・アテナイオン美術館に行けたのがうれしかったです。念願叶ってクリムトの初期作品を見ることができました。長距離ドライブをして連れて行ってくれた夫に感謝します。
  • 蔵書整理
    収納場所がないので、紙の本を半分に減らしたいと思っていました。半分は無理でしたが、1/3くらいは減らせました。キンドルさまさまです。加えて、実家で場所を借りている上に、不要な分を販売してもらっているので、足を向けて寝られません。
  • 料理
    夫がipadを買ってダイニングテーブルに設置してくれたので、必要な時レシピを調べて見ながら料理ができます。最近作ってみておいしかったのはサラダうどんと大根餅です。とはいえ、レシピに沿って調理するのは、凝った料理でない限りたいしたことではなく、夫が好きな食材を買わせてくれ、先人がインターネット上に惜しみなくレシピを公開してくれるからいろいろな料理に挑戦できるのだと思っています。
  • ウサギを調理した
    「うさぎおいしい」と言うので、一度は調理し、食べてみたいと思っていました。でも一度でたくさんです。ウサギはやはり食べるのではなく「もふもふ~」などと言って愛でるべきもものだと思います。
  • ホテルの朝食バイキング
    高級ホテルの朝食バイキングに行ってみたいと思っていました。貪欲なので、「あらゆる食べ物が用意されていて、好きなものを好きなだけ食べられる」状況に憧れていました。ウィーンのホテルの朝食バイキングはすごくて、今でも夫と「ウィーンのホテルの朝食は…」と時々話すほどです。
  •  ニューオーリンズ旅行
    アメリカ南部は初めてでした。ボストンとは雰囲気が違い、異国のようです。夫が仕事をしているときに自分は遊んでいました、はい。
  • 見た目はきれいですが、あまり清潔な街ではありませんでした
  • 竹林の道@京都
    一時帰国したとき、京都を観光できて良かったです。夫が「空き時間はpunkaの好きな所に行こうね」と言ってくれたからでした。嵐山は、ライトアップされる時期があるらしいので、次回は夜に行ってみたいです。
  • 観光客が多かった
  • ブログ
    12月にアクセス数が5万を突破しました。ご愛読いただき誠にありがとうございます。
こうして振り返ってみると、自分の努力によって達成したと誇れるようなことはまるでなくて、家族やまわりの人に助けられたり、やってもらったことばかりです。こんなことでは情けないので、来年はもう少し周囲の人の力になるような活動をしたいです。良いお年をお迎え下さい。


2013年の10冊


今年は、テキスト、漫画、雑誌類を除き、100冊程度、本を読みました。日本語:英語の比率は2:3くらいですが、日本語の本は青空文庫のものが中心で、短いものが多いです。今年の読書から特に印象深かったものを10冊、順不同で挙げます。リンクをクリックすると感想を書いている記事に飛びます。

  1. Iris Murdoch, The Green Knight
  2. Iris Murdoch, A Fairly Honourable Defeat
  3. Kate Atkinson, Not the End of the World
  4. Margaret Atwood, The Year of the Flood
  5. Lucinda Hawksley, Lizzie Siddal: Face of the Pre-Raphaelites
  6. Anna Kavan, Ice
  7. Penelope Lively, Consequences
  8. Anthony Trollope, Lady Anna
  9. 泉鏡花『春昼・春昼後刻』
  10. 夏目漱石『彼岸過迄』
ページ数でいうとアイリス・マードックをもっとも多く、合計2000ページくらい読みました。マードックは私には宝の山のようなもので、まだ20冊以上読んでいない本があるので、今後も楽しみに読みたいと思います。マーガレット・アトウッドはかなり文章の難易度が高いです。日本語訳がもっと出版されれば良いのに、と思っています。『オリクスとクレイク』は三部作の第一作ですが、これ自体が長いプロローグのようで、2巻以降も読まないとあまりおもしろくないので、日本語訳もぜひ2巻以降の出版が必要だと思います。ペネロピ・ライヴリーは軽めで読みやすいですが、別の話を書いていても全部同じトーンに感じられて、5冊ほども読むとちょっと飽きてきました。疲れたときにはいいかもしれません。アンナ・カヴァンは他に類を見ない、不思議な雰囲気にひかれました。日本でも最近、本好きな人たちの間で話題になっている作家のようなので、もっと読んでみたいです。トロロープは長い上に、古風な言い回しを使っている部分もありますが、細部を気にしすぎなければ意外と娯楽性の強い本で、ディケンズを読むときのように気軽に読めます。泉鏡花は、英語を読むよりも難しいと感じます。「そんなアホな」という荒唐無稽なプロットにもかかわらず、強い磁気のようなものを発する文章で、鏡花の大ファンが多くいるのも頷けます。『彼岸過迄』は前半がユーモア小説のように笑えるのが良いと思いました。

来年は引続きアイリス・マードックの小説と、日本から持ってきた『失われた時を求めて』を読もうと思います。それと、小説以外の本も少しは読むようにします。読書メーターを通じて、尊敬する、憧れの方々とお友達になることができました。読書メーターですてきなレビューを読んで、読みたい本がどんどん増え、幸せなことだなと思っています。

2013年12月29日日曜日

ヨークシャー・プディング



ヨークシャー・プディングはイギリスの家庭料理で、オーブンでローストした肉・魚料理と共に供されることが多いそうです。サンクスギビングにお邪魔したお宅で、七面鳥と一緒にごちそうになり、おいしかったので自分でも作ってみました。レシピは簡単です。

【材料】
  • 卵 好きなだけ
  • 小麦粉(今回は中力粉を使用) 卵の個数×50g
  • 牛乳 卵の個数×50g
  • 砂糖 少々
  • 塩 少々
  • 好きなオイル 
【手順】
  1. オーブンを440F(230℃)に予熱しておく。オーブンの中にマフィン型(正式にはヨークシャープディング型。私はどちらも持っていないので、オーブンパンにラメキンを乗せて代用しました)を入れて、一緒に温める。
  2. 卵と牛乳を泡立て器で混ぜ、粉(ふるわなくてよい)、塩、砂糖を加え、さらに混ぜる。ダマがなくなるくらいまで。
  3. 容器のくぼみ1個1個に、油小さじ1杯分くらいをたらし、オーブンでよく熱する。
  4. 容器にタネを3分めくらいまで入れ、10~15分焼く。
このプディングは甘くはなく、日本のカスタードプディングとは異なるものです。ローストした肉のグレイビーをかけて食べます。ヨークシャープディングにソーセージを入れて焼くとToad in the Hole(穴の中のヒキガエル。ネーミングセンス悪すぎます)という菓子パンのようなものができます。アメリカでソーセージを何度か買ってみましたが、ウイキョウやローズマリーのようなスパイスが気になって、あまりおいしいと思えなかったのでハムを加えたものを作ってみました。でも、ハムは入れないで焼いて、別添えにする方がおいしかったです。

クリスマスにはどんなものを召し上がりますか、と尋ねると、「サンクスギビングとだいたい同じだけど、七面鳥ではなくラムを、デザートはクリスマスプディングを食べます。クリスマスプディングはミンスミートが入っていて、フランベして食べるんだけど、めっちゃまずい(disgusting)ですよ。イギリスは食べ物がすごくおいしいことで有名な国、というわけではないから」と言っていました。近年はイギリスでもこのクリスマスプディングよりもドイツのシュトレンの方が人気があるそうです。クリスマスプディングはディケンズの『クリスマス・キャロル』にも登場し、一度は食べてみたいと思っていましたが、イギリス人がそう証言するに及んで別に一度も食べなくてもいいか、と思いました。

2013年12月26日木曜日

The Big Bang Theory(テレビドラマ)


我が夫は娯楽に興味が薄いようですが、旅行先のホテルでテレビを見て、たまたま放映されていたThe Big Bang Theoryというコメディを気に入っていました。アメリカ西海岸の名門大学を舞台とした、理系研究者の日常を題材にしています。「めっちゃおもしろいわぁ。続きが気になるわ」と言っていました。昔、理系大学院生をやっていたことがあるので、登場人物にシンパシーを感じたのかもしれません。

それで、夫の誕生日にこのコメディのシーズン1~6のDVDをプレゼントしました。ときどき、「英語能力を向上させるために英語ドラマを見よう!コメディがおすすめ」という内容の英語学習啓発を見るのですが、ジョークを理解するためには背景知識をその国のネイティブと共有し、特殊な言い回し、流行語、イディオムなどに精通していなければならず、とても高度なことだと思います。受験やビジネスで活用するために英語を学習する際、英語のコメディを視聴することが本当に有効か、個人的には甚だ疑問です。夫には「英語の勉強に役立ててください」というつもりはなく、単に楽しんでほしいだけですが、難しいので途中止めながら見ているそうです。私は、こんなに何時間もあるドラマを見る気にはなれませんが、夫がおもしろく解説(登場人物が「さん」付け、台詞が関西弁で一人称が「わし」)してくれるので、見ないでも楽しめます。

なお、このブログは夫も見ているのでこういうことを書くのもちょっとどうかとは思いますが、amazon.ukで買うと、現在送料を含めてもamazon.comで買う場合の半額以下で買えます。ただし、DVDのリージョンはamazon.comで販売されているものは1、イギリス版は2(日本もDVDはリージョン2)で、再生機器によっては対応していない場合もあるようです。イギリス版は多種多様なヨーロッパ言語の字幕を選択できますが、日本語字幕はついていません。

2013年12月25日水曜日

グレツキ「悲しみの歌の交響曲」


クリスマスにむけて、家を飾り付け、12月初頭にはささやかな昼食会を開き、 夫とプレゼント交換をしました。でも、単に商業主義に取り込まれて快楽を追求するだけではもったい気がしました。クリスマスの本来の意味を少しは考えたいと思って、12 月は毎日新約聖書を読むようにしました。ヨーロッパ文学に少し興味があるので、今後読んでいきたいと思っているところ、聖書の知識は不可欠なのでしょう。英語版聖書は日本語版よりも読みやすいです。


アドヴェントの時期にベートーヴェンの第九やクリスマス・キャロルも聴きますが、今年、とりわけ心に沁み入るように感じられたのは、ポーランドの作曲家、ヘンリク・グレツキの交響曲第3番「悲しみの歌の交響曲」です。この交響曲には歌詞が付いていて、1楽章は聖母マリアの悲しみを、2楽章はナチスの強制収容所の壁に書かれた一節を、3楽章は戦争で息子を喪った母親の悲しみを歌っています。収容所の壁に書かれた一節は次のようなもので、18歳の少女の署名があるそうです。
お母さま、どうか泣かないでください。
天のいと清らかな女王さま、どうかいつもわたしを助けてくださるよう。
アヴェ・マリア。 (沼野充義・訳)
歌詞の意味を知り、音楽を聴くと厳粛な気分になります。旋律は深い悲しみに満ちたものですが、非常に美しいです。音楽を通じて、離れた土地や時代の人々、家族やお友達やお世話になっている人々を思い、自分が今ここに在ることを感謝しなくてはいけないなと思います。

グレツキは本作とは大きく毛色の異なる音楽も作曲しているようです。

メリークリスマス

サンクスギビングにお邪魔したお宅で、夫がゴムのアヒルちゃんを喜んでいたためか、その方からクリスマス仕様のアヒルちゃんを頂いてしまいました。夫のぬいぐるみコレクションはずいぶん賑やかになりました。楽しいクリスマスをお過ごし下さい。

2013年12月23日月曜日

カシミアの手袋


 一緒にアイススケートに行ったときに、英語の先生が「手袋破れちゃった」と言っていたので、クリスマスプレゼントに手袋を買いました。贈り物なので、少しは良いものを、と思い、カシミアにしました。


アメリカだと、お店でプレゼント用にきれいにラッピングしてくれることはほとんどありません。自分でラッピングするといつも「ラッピングが上手ね」と言われます。折り紙のサンタクロースは日本人にとっては子供だましでしかないですが、外国ですると物珍しいかもしれません。先生のお友達が日本にホームステイするとき、ホームステイ先にお土産を持参したそうなのですが、「日本では中身よりも包装が重要」と聞いて、苦労して何度も包み直し、包装紙は途中でボロボロになってしまったので買い換えたほどだったそうです。それでいざ渡すときに「包装がうまくなくてすみません」と言ったら「すぐに上達しますよ」と言われたそうで、先生は「そんなこと言うなんて、かわいそうだわ。すごく苦労して包んでいたのに」と言っていました。というわけなので、外国人が下手なラッピングのお土産を持ってきても突っ込まないであげてください(?)。

手袋は「手触りがいいね!」と喜んでいただくことができました。


2013年12月22日日曜日

牛ステーキ丼


 夫が「一時帰国して食べた一番おいしかったものは和牛ステーキ丼」だと言うので、夫の誕生日にステーキ丼を作ることにしました(日付は今日ではありません)。シンプルな料理は材料がものを言うと思うので、日本人駐在員に紹介して頂いた、「おいしい」と評判の隣町の肉屋さんまで行って、ステーキ肉を買いました。The Meat Houseというお店で、東海岸とカリフォルニアに店舗があるようです。日頃あまり食事にお金をかけませんが、このお店の肉は、半年も前から夫と「何か特別なイベントのときに買ってみましょう」と話していました。

1ポンドあたり12ドルのサーロインステーキを買いました。これでも100gあたりだと300円以下なので、日本の感覚では高級肉というほどではないかもしれません。霜降りではなく、赤味肉でした。少しレアに焼き、おろしポン酢に柚子を添えました。肉はやはりスーパーマーケットに安く売っているのとは違って、臭みがなく、柔らかくておいしかったです。夫は「再現度高いねぇ」と言っていました。サラダと味噌汁も作りましたが、一人220グラムの肉はちょっと多すぎて、サラダは食べられませんでした。食べるものはだいたい日本の方がおいしいですが、ステーキを日本で食べるとお値段がはります。少し背伸びすれば良い肉を食べられることがアメリカに住むことの醍醐味かもしれません。

2013年12月21日土曜日

Kindle Daily Deals

どんな本があるかしら…?
Kindleで電子書籍を買っても、著作権存続中の本は紙の本と同程度の価格であることが多く、中古で買うならば紙の方が安いです。省スペースになるので、新しい本かKindleしか選択肢がない場合は電子書籍を選びますが、中古で新品同様という状態の本が1セント(送料がかかるので実際は4ドル)で買えるのに、Kindle版は15ドルもかかるとなると、電子書籍を買うのは躊躇してしまいます。

そこで、(amazonの回し者ではないのですが)Kindle Daily Deals登録すると、日替りでKindle本を半額~8割引の値段で購入できます。登録は無料です。Daily Dealsの取扱い本は一日あたり数十冊で、読みたい本があるとは限りませんし、毎日メールが届くので1週間も経つと、今日はどんな本があるかとチェックするのが面倒になってくるのですが、まれには欲しい本があります。割引率が高いので、運良く読みたい本が見つかると、結構良い買い物ができます。私は10月に登録して、最近は面倒になってあまり見ていなかったのですが、アイリス・マードックの取扱いもあったという情報を得て、そんなに渋い作家もあるのなら、一日3分程度のことなので、やはり毎日ラインナップを見てみようと思った次第です。

残念ながらamazon.co.jpによる日本語版Kindleの同様のサービスはないようです。

2013年12月20日金曜日

A Fairly Honourable Defeat(本)


 How can one live properly when the beginnings of one's actions seem so inevitable and justified while the ends are so completely unpredictable and unexpected?(Iris Murdoch, A Fairly Honourable Defeat)
【書誌情報】
Iris Murdoch, A Fairly Honourable Defeat, Chatto & Windus, 1970

【あらすじ】
ロンドンに暮らす官僚のルパート・フォスターは、郊外にプール付きの家を構え、妻のヒルダとは結婚20周年を迎える現在でも仲がよく、善についての哲学書を執筆中である。自分の同僚であるアクセルと同性愛関係にある弟のサイモンや、オクスフォード大学を休学中の問題児の息子、ピーターのことなど懸念がないわけではないものの、概ねイギリス中産階級の理想的な生活をするルパートであるが、アメリカから帰国した義妹のモーガンが家に滞在することになり、平穏な生活が陰りを見せ始める。モーガンは貧乏で冴えない夫、タリスを捨てるも同然に渡米し、現地で悪魔的な魅力のジュリアスと不倫関係に陥った。モーガンとジュリアスの仲は既に破局していたが、時を同じくしてジュリアスもロンドンに渡り、モーガンを挑発して二人はとある賭をすることになる。

【コメント】
本書はワクワクする内容で、興奮しすぎて眠れなくなり、眠いのに読んでいたら頭が痛くなりました。突然やってきて、特に自分と利害関係があるわけでもない、平穏な人間関係を徹底的に破壊し尽すジュリアスの悪党ぶりは、気分が悪くなりそうなのに、目が話せません。

ジュリアスは聡明な美男子で、魅力に溢れ、旧友のアクセルにその「倫理的な魅力」を賞賛されるほどです。しかし、実態は自分の力を誇示し、観察して楽しむためだけに、他人を陥れてまったく罪悪感を持たない性格です。ジュリアスは、元恋人のモーガンに、「自分はどんなに強固に見える人間関係をも簡単に破壊して見せる」と宣言し、モーガンの身内をその標的にします。感情がほとんどなく、刺激を求めることなどから彼はいわゆる「サイコパス」ではないかと思います。「悪い」ということが彼の最大の特徴で、他にはほとんど際立った性格を持っていないような、不思議なキャラクターでもあります。英語版Wikipediaには北欧神話の「ロキのような」と書かれています。私にはシェイクスピアの『オセロー』に登場する悪党、イアーゴーを思わせました。20世紀のイアーゴーは、エリザベス朝のイアーゴーよりもはるかに手の込んだ策を弄し、人々に大きなダメージを与えます。

マードックの小説には時折ゲイのカップルが登場します。本書に登場するのは40代の官僚と30歳くらいのフェミニンな男性のカップルです。年上のアクセルを子犬のように慕うサイモンと、威厳を見せながらも、実はツンデレ(?!)なアクセルの二人は、互いに純真な愛情を抱いていて、甘酸っぱいです。アクセルの誕生日のために一生懸命料理したのに、ジュリアスにめちゃくちゃにされて焦げた料理の前で泣くシーンが切ないです。

他にも一癖あるキャラクターばかりで、彼らの繰り広げる人間模様と会話が刺激的です。会話文が多いので読みやすいです。ジュリアスの仕業はひどいものですが、登場人物たちの欺瞞が暴かれていく様は痛快でもあります。

非常にまじめな作品ではありますが、ところどころ部屋の隅で壁に向かってニヤリとしたくなるようなギリギリのユーモアが散りばめられています。たとえば
  • 呼び出された挙句に呼び出した本人は不在で、偶然により服をとられて裸のまま待ちぼうけをくらう
  • 別居中の妻に「私の荷物を持ってきてよ」と言われ、手押し車に荷物を積んで持って行ったら、なんで車で来ないの、と言われ、「持っていないから。下り坂だから問題ないよ」と言うところ
  • 誕生日プレゼントに嫌がらせとして大きなピンク色のくまちゃんを贈られ、どこかに置き去りにしようとするものの、あやしまれるばかりでなかなか捨てることができない
などです。また、マードックの作品は小道具の使い方が印象的です。とりわけ、石や宝石はよく登場し、本書では孔雀石のペーパーウェイトと琥珀のネックレスがちょっとした役割を担っています。他の作品で扱われていたのは、水牛の角、琥珀、ラピスラズリなどで、並べてみるとマードックの好みが少し分かるような気もします。

悪がのさばって、人々が罠にはまり、収拾がつかなくなってきたところへ、颯爽とあらわれた意外な登場人物が、もつれた糸を鮮やかに解きほぐします。タイトルのA Fairly Honourable Defeatの意味するところは、悪であるジュリアスが賭に負けたこと、汚い家で埃にまみれて惨めな生活をし、他の登場人物より経歴も劣るような「彼」にジュリアスがまんまとやられたことを指すのかと思いましたが、Wikipediaにはそれとは正反対の解釈が示されているので、私の読み方がおかしいのかもしれません。日本語訳が出版されていないのが残念ですが、これまで読んだマードック作品の中では、The Green Knightと並んで娯楽性が強いと思います。(なお、人物相関図はふざけた感じですが、本の内容はまったくこんなふうではないです)

2013年12月18日水曜日

プチ・マドレーヌ、プルースト


マドレーヌの型は単能機だし、場所を取るので敢えて買うのは憚られましたが、普段よく行くスーパーマーケットの商品入替えで半額($3.50)になっていたので買いました。マドレーヌと言えばプルーストであるところ、ティーカップというのはそんなに大きなものではないので、お弁当のアルミカップのような大きな型で焼いたマドレーヌを紅茶に浮かべるのは変な気がします。プルーストは「プチ・マドレーヌ」と書いているので、小さなものだっただろうと思います。買ったのは、極小というわけには行きませんが、一番長い部分が2センチくらいなので小さめだと思います。


ハチミツ入りマドレーヌを焼いてみました。焼き菓子にバターを使う場合、室温に戻して柔らかくしてから使うことが多いですが、マドレーヌは最後に溶かしバターを加えるところが特徴的です。焼きたてよりも冷蔵庫にしばらく置いてからの方が味が馴染んでおいしいです。ハチミツはオレンジ蜜を使いました。レモン香料を少し入れたのですが、レモンの香りはハチミツの香りに隠れてしまいました。夫は「売っているやつみたいやねぇ」と言ってくれました。


マドレーヌの生地は膨らむので、型のへこんでいる部分のギリギリまで生地を入れると焼き上がりが上のように無様な姿になります。八分目くらいで止める方が良いようです。


『失われた時を求めて』全巻は日本から持ってきた数少ない本の一つです。渡米したら暇なはずだから読もうと思っていたのですが、まだ半分くらいまでしか読んでいません。持ってきた本を読まずに持ち帰るのはもったいないので、来年は必ず全巻読破しようと思います。こういった、かさばる本こそ電子書籍版を出してほしいと思いますが、Kindleだと光文社版が「近日発売予定」となっているだけのようです。英語版は全巻が300円でダウンロードできます。 ただ、プルーストは日本語訳でも難しいと思いますし、原典がフランス語のものを英語で読んでも、時間ばかりかかってそんなに意味がない気がするので、英語版を読もうとはあまり思いません。

2013年12月15日日曜日

アイススケート

スケート場の様子(一部嘘あり)
お友達に誘われて、近所のスケートリンクへアイススケートをしに行きました。入場料は大人一人5ドル、スケート靴を借りるとプラス5ドルです。制限時間は2時間です。土曜日に行きましたが、リンクは空いていました。

スケートは子供の頃は何度かやったことがあり、最後に滑ったのは10年前です。大学のアイススケート部が主催で、深夜にリンクを借り切って夜中に滑りました。10年ぶりで体もかたくなっていて、なかなか怖かったです。滑っている人は上手な人が多くて、すごいスピードで滑走するし、他人が転んでいるのを見るのも怖いです。地面に転ぶときと違って、少し転ぶとそこから数メートル滑って行くので、大転倒のように見えます。転ぶのは子供が多いですが、子供は転ぶのがうまいし、体が小さいのでダメージは少ないように見えます。自分が同じように転ぶとかなり大変なことになりそうだと思いました。

はじめ15分くらい壁にしがみつきつつ滑っていましたが、後半は手を離して歩ける(あまり滑れずによちよち歩く)ようになったので、怖いながらも楽しかったです。ロシア人のお友達は上手で、後ろ向きに滑りながら引っ張ってくれました。「私の出身地では市内に、スケートリンクが3個"しか"ありませんでした。少なすぎます」と言っていましたが、さすがロシア、市内に3個もリンクがあるなんて充分多いと思います。私の出身県には、1個しかスケートリンクはないようです。

子供の時は怖いとも思わなかったし、上達も速かった気がします。年を取ったものだと思わせる経験でしたが、スキーよりは手軽にできるので、ちょっと運動をしたいとき良いかと思いました。

2013年12月14日土曜日

ボストン美術館のメアリー・カサット



メアリー・カサットはアメリカの女性画家です。裕福な家庭に生まれましたが、画家になるには周囲の強い反対があったようです。彼女の描く穏やかな母子像は日本でも人気があると思います。ボストン美術館にはいくつかのカサットの作品が展示されています。上の絵は「お茶」という、カサットの代表作の一つです。私には室内でお茶を飲むとき帽子も手袋も着けたままというのが違和感があるのですが、それはさておき、絵のそばに、作品に描かれたティーセットが展示されています。


 同じ部屋には、劇場にいる女性の絵と、彼女が持っているオペラグラスと扇もあります。



私は、カサットには興味がなかったのですが、こういう展示はおもしろいと思います。ティーセットも扇も、絵に描かれたそのままの姿で保存されていて、ちょっとうれしくなります。

2013年12月12日木曜日

サージェントの水彩画展

会場の様子
ボストン美術館で開催中のサージェントの水彩画展に行きました。美術館は常設展の他、常に複数の特別展を開催していますが、ほとんどは小規模なもので、作品数も50以下であることが多いです。でも、今回は100以上の水彩画が展示され、充実した内容でした。インターネットや新聞などでもかなり宣伝されていたので、会場はアメリカの美術館としては珍しく、混雑していました。サージェントの人気のほどを伺わせます。





私も、サージェントはアメリカでもっとも優れた画家ではないかと思います。肖像画家として成功をおさめ、充分な財産を築いたサージェントは、晩年には著名人や裕福な人の肖像画を受注するのをやめ、ヨーロッパや西アジアを旅行して趣味で水彩画を描きました。主題は無名の人や、風景が多いです。「透明水彩」という描法で描いているそうです。

通りすがりのお客さんが、「サージェントはまるで人間カメラだね!」と言っていて、なるほどと思いました。素早い筆遣いで、写真を撮るようにあらゆるものをスケッチしていたようです。現代の画家が展示作品の一枚を模写する様子がビデオで放映されていました。その画家も、「サージェントはとても速く描いた形跡があります」と言っていました。とはいえ、「雑」という感じはなく、すべて生き生きとして、色も鮮やかで楽しげです。


「エドワード・ボイトの娘たち」のエドワード・ボイトもセミプロの画家でした。彼の作品も2、3展示されていましたが、サージェントと力量の差が歴然としていると思いました。市民絵画教室の一番上手な人なら、これくらい描くのではないでしょうか。

以前から期待していた展覧会でしたが、期待以上の内容で、夫と「やっぱりサージェントはいいですね!」と話しました。会場で販売されていた図録は少し高いので買いませんでしたが、ポストカードブックは、手軽でありながら印刷もなかなかきれいなので、おすすめです。

2013年12月10日火曜日

驚異の棚

アメリカ国内や、ヨーロッパを旅行して美術館や自然史博物館を訪れると、ヴンダーカンマー(Wunderkammer, cabinet of curiosities,驚異の部屋)を作りたいと思うようになりました。部屋全体をそれらしくするのは難易度が高いので、驚異の部屋によく見られるような陳列棚を作ることにしました。簿記の勉強をしていたとき、「合格したら驚異の陳列棚を作る!」というニンジンをぶら下げて、しょっちゅうサボりたくなるのをどうにか我慢していました。

ベルリン、自然史博物館

ボストン、科学博物館

出典
博物館や美術館で撮った写真や、画像検索をして何を陳列するか考えました。

夫にお願いして、クリスマスに壁掛式のガラス戸つきキュリオケースを買ってもらいました。サイズは50×35×8(センチ)くらいです。ヴンダーカンマーの趣旨から外れるような気もしますが、自然科学的・博物学的アプローチはせず、自分の趣味で集めたものを並べました。地球ゴマは子供の頃遊んだもので、砂時計(2秒計)は25年ほど前の、親戚のドイツ土産です。その時は、外国製のものが今よりは少し珍しかったように思います。真鍮部分が錆びていたところ、酢につけておくときれいになったので、飾ってみました。鉱物や貝殻は以前から細々と集めていました。ニューオーリンズで買った鉱物の一部を陳列しました。実家のコレクションから、もらってきたものもあります。
普段目につかないところへしまって、時々眺める方針だとしまいこんでいる時間が99パーセントになるので、もったいない気がして、いつも見えるところに飾ることにしました。

ヴンダーカンマーというと、剥製やホルマリン漬け、骨格標本の他、グロテスクに感じられるものでも物珍しければ陳列してあることが多いですが、私はやめておきました。そもそも剥製やホルマリン漬けは持っていません。結果、ヴンダーカンマーとしては怪しさが足りないというか、小奇麗すぎる感があって、「驚異の」と銘打つには迫力がありません。まだ空室があるので、中に入れるものは今後も徐々に収集します。

興味のない人にとっては単なるガラクタの集積で「なんだこれは!?」という感じだと思いますが、私には手に入れた時のことや、各地へ旅行した際のことなどを思い出させてくれ、不思議な非日常をも感じさせます。昨年もらった、ウィリアム・モリスのタペストリーの向かい側の壁に飾っています。木彫りの熊はイヤだと言いつつ、インテリアのことは私のしたいようにさせてくれる夫に感謝します。

2013年12月9日月曜日

昼食会


お友達を招いて昼食会をしました。いつもお世話になっている英語の先生と、ロシアのお友達2人です。昨年も同じ頃に昼食会をしたのですが、その時はカモの丸焼きにばかり気合を入れすぎて他の食べ物が足りなくなってしまったので、今回は少し種類を増やしました。メニューは
  • オニオングラタンスープ
  • テリーヌ
  • イズミダイの香草焼き
  • マッシュポテト
  • スモークサーモンのサラダ
  • キャンディードスイートポテト
  • パスタサラダ
  • ハム(頂き物)
でした。食べ物の写真が下手なので、もっときれいに撮れるようになりたいものです。キャンディードスイートポテトはサツマイモ(本来はヤムイモ。さつまいもよりも水分が多い)にシナモンやバターをかけ、マシュマロを乗せて焼いた料理です。私は好物なのですが、これをおいしいと思っているのは私だけのようで、作っても夫はそっぽを向くし、昼食会の時もこれだけは2口くらいしか手を付けられていませんでした。自分がおいしく食べられるものしか作らないので、料理が残っても問題ありません。他のものは概ね好評だったか?と思っています。デザートはオレンジケーキ、いただいたティラミスと果物でした。オレンジケーキは「甘すぎなくておいしいね!」と言っていただき、レシピを尋ねられました。

日本のお土産に、「濱文様」のハンカチを差し上げました。日本的な柄で、喜んでいただけたようです。


ポインセチアとクリスマスカードをいただきました。ポインセチアの赤で華やかになり、これならば神棚とまちがうこともありません。

ボストンはアイススケート場があちこちにあるので、今度は一緒に滑りに行きましょう、という話をして盛り上がりました。

2013年12月5日木曜日

今年のクリスマス飾り



12月最初のレッスンの時、英語の先生が「大きいクリスマスツリーは日本に持ち帰れなくて飾れないでしょうから、小さいのをどうぞ」と言って鉢植のイトスギを下さいました。かわいらしくて気に入っていたのですが、室内に入れていたら翌朝にアレルギー症状が出てしまったので、玄関に置いておくことにしました(今、花粉を飛ばす時期ではないはずなので、なんとなくおかしい気もしますが)。


昨年とあまり変わりませんが、キャビネット上のディスプレイです。手放したものと新しく買ったものとがあります。クリスマスは本来、キリスト降誕の馬小屋を模したフィギュリンを飾るべきでしょうし、カトリック的なディスプレイになってしまったとか、聖母像と天使の縮尺が合っていないとか、いろいろ変なところがあります。このマリア様の慎ましやかな美しさには抗えませんでした。


紙製の天使のオーナメントを飾りました。デンマークのイェッテ・フローリッヒというデザイナーのものです。一時帰国したとき見つけて、欲しいと思ったら「あれはディスプレイ用で、販売していません」と言われたのでアメリカで探しました。ヒイラギの枝に飾ると、モーリス・ドニの「木の葉の中の梯子」という絵のようになりました。


ろうそくは写真を撮るときだけ火を灯しました。ドイツでは現在でもクリスマスツリーに火のついたろうそくを飾るそうですが、木の葉、紙や藁など燃えやすいものの近くに裸火を置くのは怖すぎます。実際、クリスマスツリーが原因で火事もよく起こるそうです。

自己満足して悦に入っていたのですが、改めて見ると、日本のものが一つもないのに地味過ぎてまるで神棚です…

2013年12月4日水曜日

The Good Apprentice(本)

ギュスターブ・ドレ(『神曲』は関係ありません)
【書誌情報】
Iris Murdoch, The Good Apprentice, Chatto & Windus,1985

【あらすじ】
ロンドンでフランス文学を学ぶエドワードは、同級のマーク・ウィルスデンに麻薬入りのサンドイッチを与える。エドワードがガールフレンドからの呼出しに応じている間にマークは窓から飛び降りて死んでしまう。裁判では事故死と認定され、エドワードが法律上の罪に問われることはなかったが、彼は殺人者としての自責の念に苛まれ、抑鬱状態に陥る。たまたま訪れた降霊会で「父を訪ねるべし」というお告げを受けたエドワードは、継母からの招待状を受けとり、高名な画家で、生き別れとなっていた父のジェスを訪ねる決心をする。継母と腹違いの姉妹たちは森深く、塔のある大きな家で自給自足の生活を営み、エドワードを温かく迎えた。しかし、エドワードが「父親はどこか」と尋ねてもはぐらかされるばかりで、なかなか会うことができないのだった。一方、エドワードの叔母は彼の継父と不倫の関係を持っていた。

【コメント】
アイリス・マードックの小説は長く、あらすじを読むとなんとなく辛気臭いですし、文章もすごく読みやすいとは言えないので、これを読むのは大きくて硬い木の実の殻か、石をこつこつと砕くようなものだと思います。でも、殻や石の中には味わい深いナッツとか、キラキラ輝く水晶が隠されていて、読み甲斐があります。

「うっかり人を殺す」という罪を犯した主人公のエドワードは救いを得るべく(実はこっそりと仕組まれた)超自然的な力や、偶然に導かれるように人里離れた森に住む父のジェスと継母、姉妹を訪れます。女たちは長いドレスに金髪の姉妹のようで、食べるもののみならず衣服や家具も手作りする浮世離れした生活をしていました。継母と姉妹は、愛人の子であるエドワードを親切に迎えます。朽ちかけた家には塔があり、夜になると森からバンシーの泣く声すら聞こえるほどでした。まるで中世騎士物語かおとぎ話の世界ですが、塔に閉じ込められているのはお姫様ではなく、耄碌しかかっている男性です。

おとぎ話のように物事が進むはずもなく、エドワードがジェスを発見し、家族の関係が明かになるにつれ、善意に満ちた無垢な乙女のような彼女達の本性が露になります。エドワードは幼少期以来、会ったことのなかったジェスが自分を覚えていることに感激し、彼を神格化します。やっとの思いで再会した父親は、自分が罪を乗り越える手助けをしてくれるに違いない、と考えるエドワードは必死にすがろうとします。しかし、ジェスはもはやかつての栄光も生活能力も失っており、エドワードの手からすり抜けます。人としてほとんど抜け殻状態であるにもかかわらず、カリスマ性が残っているジェスの描写が興味深いです。

本書のテーマは「罪からの救済」と「不倫の愛」だと思います。ただ、人々の意識の中心にある神のごとき存在のジェスは非常に頼りなく、エドワードも、義兄と不倫関係にあるエドワードの叔母、ミッジも結局は「神」とつかの間の接触をした後、自ら救いを模索するしかありません。本書がどれくらい宗教的なものを重視しているか、私には分かりませんが、神のような存在による一方的な救済ということはありえないのだろう、とは思います。

本書の主人公がエドワード、女主人公がミッジであるなら、第三の主人公はエドワードの母の再婚相手(ミッジの不倫相手)の連れ子である謹厳なスチュアートです。彼は禁欲的な生活をして、聖職者か、なにか他人に奉仕する職に就くことを望み、自らの信条にしたがって思ったことを率直に言いすぎるので、家族や親戚に鬱陶しがられます。スチュアートは、超然とした態度で、相手の感情にまったくそぐわない、理想論的なお説教を何度もします。その度にものを投げられたりして追い払われるのに、懲りずに同じことを繰り返して、最後には「学校教師になる!」という彼がおもしろくてすてき過ぎます。

なお、かなり多くの人物が登場するので、もしも読もうとする場合は人物相関図を作成されることをおすすめします。

2013年12月2日月曜日

BSOとピーター・ゼルキン

ブラームス。キュート☆

 ボストン交響楽団のコンサートに行きました。曲目は
  • ブラームス ピアノ協奏曲第2番
  • ベートーヴェン 交響曲第7番
でした。ピアノ協奏曲のソリストはマサチューセッツ在住のピーター・ゼルキンでした。ゼルキンはミスタッチが多いことで有名らしいです。今回も冒頭からミスタッチの連続でした。インターネット上には「ミスタッチを超越する音楽性がある」といった評も見られるのですが、私は完璧(に近い)なテクニックありきの音楽性ではないかと思います。音もこもったような感じでしたし、オーケストラが一生懸命ソリストにつけようとしているのにソリストは好き勝手に弾いていて噛み合わせが悪く、次はいつ間違うかとハラハラして逃げ出したくなってきました。終わるとホッとしました。素人が音楽の「良し悪し」について言うのもおこがましいかもしれませんが、聴く者にいたたまれない思いをさせる演奏が「良い」とは思えません。

指揮者はタングルウッドでも振っていたおじいちゃん指揮者のド・ブルゴスでした。夫は「あの指揮者、何かが取り憑いたようやったな」と言っていましたが、ベートーヴェンの7番の時は座らずにアグレッシブに指揮をしていました。演奏は整然としていて、音が金色に輝くようでした。ベートーヴェンの生演奏を聴いていると、時々わけもなく、やはり神様っているのだろうな、と思います。夫は「前半と後半と別のオケやったやん」と言っていました。

シンフォニーでピアノ協奏曲の演奏の残念さを補って余りあるコンサートだったと思います。それにしても、本当に聴きたいものを聴くために変な現代音楽とか、微妙なソリストの演奏を我慢しないといけないというプログラム構成にはやはり問題があるように思います。