ラファエル前派の画家とモデル 9.ジョージアナ・バーン・ジョーンズとマーガレット



Georgiana Burne-Jones (1840-1920)
スコットランドのジョージ・マクドナルド牧師(同姓同名の作家とは無関係)の娘として生まれる。15歳の時、兄の級友であったエドワード・バーン・ジョーンズと知り合い、婚約する。バーン・ジョーンズはオクスフォード大学で神学を専攻し、そこでウィリアム・モリスと出会った。モリス、バーン・ジョーンズはロセッティの影響により芸術を志すようになり、バーン・ジョーンズは大学を中退して画家となる決意をした。バーン・ジョーンズとジョージアナは1860年に結婚した。その後、バーン・ジョーンズはモデルのマリア・ザンバコと駆落ち騒動を起こすものの、最終的には妻の元へ戻った。ジョージアナはバーン・ジョーンズの回想記を執筆している。自身も多少の絵画をのこしているほか、モリスや作家、ジョージ・エリオットの良き友人でもあった。


Margaret Mackail (nee Burne-Jones, 1866-1953)
エドワード・バーン・ジョーンズとジョージアナの娘。オクスフォード大学の教授、W.M.マッケールと結婚した。3人の子供が生まれ、うち二人は作家になった。

【モデルをつとめた主な作品】
バーン・ジョーンズ「クララ・フォン・ボルク」テイト美術館、1860年
バーン・ジョーンズはマインハルトの詩、「魔女シドニア」に基づき、二枚の作品を描きました。一枚はロセッティの愛人、ファニー・コーンフォースがモデルとなった「シドニア・フォン・ボルク」で、もう一枚はシドニアの妹、クララを描いた本作です。マインホルトは、クララについて「知的で、勇気があり、誠実で、物静かな、親しみやすい性格であり、信仰深く、キリスト教徒らしい振舞をした」と書いています。バーン・ジョーンズは、ネコから遠ざけるために、手の中に鳩のヒナを描くことにより、クララのやさしい性格を描き出しました。ヒナを狙う黒猫はシドニアの使い魔であり、クララが姉の手により殺されることを暗示しています。出典
前面に静止した主役を大きく描き、背景に顔が判別できない、立ち働く侍女たちを描いているのが、ルネサンス的な表現であると思います。

バーン・ジョーンズ「緑の夏」1868年

ミレー「りんごの花」1859年
中央に座っている、孔雀の羽を持っている女性がジェーン・モリスで、後ろを向いて、頭に白い布を被り、読書しているのがジョージアナです。他に、ジョージアナの姉妹もモデルをつとめました。女性達が草の上に座り、テーマが季節であることから、J.E.ミレーの「りんごの花」を思わせる一枚ですが、バーン・ジョーンズの作品は古代風の衣装や、森のほの暗さなどが、神話的な雰囲気を生み出しています。

バーン・ジョーンズ「ジョージアナと子供たち」

バーン・ジョーンズ「マーガレット」

バーン・ジョーンズ「いばら姫」バスコット荘園、1890年
バーン・ジョーンズはグリム童話の一篇、「いばら姫」に取材した連作を描きました。いばら姫のモデルは、娘のマーガレットです。4枚で構成される連作は、一枚ごとにストーリーが進行する形式ではなく、同じ時点の別地点を描いています。それぞれの絵の下に、ウィリアム・モリスによる短い詩が書かれています。バーン・ジョーンズの描くマーガレットは、この世のものならぬ美しさ、かわいらしさで、バーン・ジョーンズにとって、お嬢さんはイバラと侍女たちに守られて眠るお姫様のような大切な存在だったのだろうか、と思います。
この作品に影響を受けたと思われる「いばら姫」

バーン・ジョーンズ「プシュケの結婚」ベルギー王室美術館、1895年

【その他】
アリス・キプリング

アグネス・ポインター

ルイーザ・ボールドウィン
  • ジョージアナはマクドナルド牧師の7人の娘たちの一人でした。夭逝した二人と、生涯未婚だった一人を除き、姉妹はそれぞれ著名人と結婚しました。ジョージアナの姉、アリスは、ラドヤード・キプリングの母となり、妹のアグネスは画家のエドワード・ポインターと結婚し、もう一人の妹のルイーザは実業家ボールドウィンの妻となり、息子はスタンリー・ボールドウィン首相です。
  •  マーガレットには子供が3人ありました。上の写真は、バーン・ジョーンズと孫たちです。おじいちゃんは、孫がイタズラをした罰として、壁に向かって立たされる間、罰を受ける苦しみが軽減されるようにと、壁に妖精、花、小鳥、うさぎなどを描いた、というエピソードがあります。出典

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