レイチェル・カーソン『沈黙の春』

デーメテール 出展 Wikimedia Commons


【書誌情報等】
Rachel Carson, Silent Spring, 1962=レイチェル・カーソン著、青樹簗一訳、『沈黙の春』新潮社、1964年

【あらすじ】
Wikipedia

【コメント】
化学メーカーである勤務先は、農薬も重要な製品の一つです。入社時にResponsible Care(化学メーカーにおけるCSR的な活動)研修を受け、「カーソンの『沈黙の春』を読んでみてください」と言われました。ビジネス書や自己啓発本ではなく、『沈黙の春』を勧められたことに感銘を受けました。

本としては、読んですごくおもしろい、というものではなく、また、事例をやや脈絡なく列挙している感があり、読みにくい部類に入ると思います。農薬や化学物質の専門的な話もあるので、分からないところは飛ばし読みしました。しかし、本書が農薬の使用に警鐘を鳴らし、社会的な影響も大きかったことは、知っておかなければいけないことだと思いました。

最初は英語で読もうと思っていましたが、日本語で読んで良かったです。化学物質名のほか、鳥や植物の名称も多く登場するので、英語で読んでいたら、それが鳥や植物の名前であることすら分からずに、かなりストレスが大きかったものと思われます。

そして、その後、政府の規制が非常に厳格化、化学メーカーの自主規制により、農薬の危険性に対する認識は、本書が発表された当時とは大きく変わりました。本書の功績も大いにあったようです。業務に必要なので、農林水産省の「農薬の基礎知識」と農薬工業会の「教えて!農薬Q&A」は日々参照するようにしています。これらを読むと、これだけ増えた世界の人口を支えるためには、農薬は必要不可欠であることが分かります。こういったサイトは、農薬の重要性を強調し、多少は「肩入れ」して書かれている可能性もありますから、割り引いて考えないといけないだろうとは思いますが、農薬がなければ、作物の収穫は半分以下になるようです。現代の日本で「飢饉」などはまず起こらないのは、グローバル化や、日本が経済大国であるのも理由だと思いますが、農薬の貢献もあるはずです。事情が許せば、低農薬や無農薬の作物を食べるに越したことはありません。しかし、すべての人にそういった作物が行き渡ることなどは現実的とは思えません。

中身を知らずに、農薬に対してただネガティブイメージを抱いていたことこそが良くないのであって、せめて自分の直接関係のある部分は、なるべく無知を解消していきたいものだと思った次第です。

コメント